校正業務

30代前半、東京にあるマイナーな某出版社で、記者兼執筆者兼校正者をさせてもらっていた。

取材記者及び記事執筆者としての仕事は楽しいものであったが、校正業務は非常に疲れるものであった。同様な業務に就いている同僚が、私以外にも社内に数人いた。本来、校正という仕事は書き手本人が行うべきではなく、第三者にこれをさせなくてはならない。書き手本人が行うと、自分が書いた文章ゆえに”客観性”が低下し、校正漏れが多発するのが常だからである。

 

ちなみに、この私のサイトも私自身が内容を書いている訳だが、書き捨ての類であって、校正などしていない。故に、あちこち書き間違いがあるはずであるが、商業性のあるサイトではなく、趣味的なサイトに過ぎないので校正などする気が全く湧かない。加えて、ほとんど常に晩酌しながら書いており、書く前から既にロリッている有様(笑)。

 

さて校正という仕事であるが、これは結構神経を擦り減らす。

ある時、校正業務を1日7時間、継続して2週間行う必要に迫られた。10日目頃になると、流石に神経がまいってしまった。その時、ランチタイムで社外に出ると、別の出版社に勤務している友人と路上で出会った。

 

私: 「ここんところ校正校正の連続でまいっている。」

友人:「何の校正をしているんだ?」

私: 「自分が書いた記事やらなんやらさ。」

友人:「甘い!! そんな事何でもない! 俺が最近まで何の校正をさせられ

    たか話してやる。」

私: 「えっ?」

友人:「バーコードの校正だ。毎日8時間、半年も続けてやったんだぞ!その

    恐ろしさがお前に分かるか?」

私: 「ゲーッ!!! バーコードの校正を毎日8時間、半年!! お前良く

    耐えたな。半分サイボーグじゃないのか?」

友人:「最初の2ヶ月が特にしんどかった。しかし、3ヶ月目頃からは慣れが

    できたのか、あまり苦痛は感じなくなったさ。2ヶ月目の末に、休憩

    時間に会社の屋上にあるベンチで休んでいたが、会社の10階の屋上

    から飛び降りたくなった。でも、子供のことを考えて思いとどまった。

    それに給料は良かったからな。」

私: 「....................................................」

 

これは1980年代の話であって、2015年現在のようにパソコンが広く普及していた訳ではない。第一、Windows 自体存在していなかった。良くは知らないが、現在ではパソコンソフトでバーコードの校正は可能なはずである。

 

当時は、バーコードの校正は拡大鏡と精密物差しを用いて人間の視覚に頼って行っていた。バーコードは何本もの線がずらっと並んでいるが、線と線の間隔や線の太さが0.1ミリでも異なると問題が生じるので、その校正業務はハードなどという表現を通り越し、非人間的とも呼べるものであった。